研究課題/領域番号 |
22791378
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河本 旭哉 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30420558)
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キーワード | 骨軟部肉腫 / アポトーシス / SIRT1 / 長寿因子 |
研究概要 |
本研究の目的は骨軟部肉腫における長寿遺伝子SIRT1の発現および腫瘍増生への影響を検討し,骨軟部肉腫に対する新たな治療への応用を評価することにあり,化学療法において極めて発展途上である骨軟部肉腫の領域において現在使用承認あるいは開発中である薬剤ではなく,新たな分子標的治療の可能性について検討,確立を目指すものである. これまでに,当院で手術時に採取した良性および悪性骨軟部腫瘍組織45検体(神経鞘腫15検体,骨肉腫15検体,悪性線維性組織球腫(MFH)15検体)におけるSIRT1の発現についてリアルタイムPCR法による定量的な検討を行い,良性腫瘍である神経鞘腫(15検体)と比較して悪性腫瘍である骨肉腫(15検体)やMFH(15検体)においてSIRT1の発現が有意に高かった. この結果を踏まえ,SIRT1機能の選択的阻害が骨軟部肉腫細胞増殖に抑制的に作用する,と仮定し,SIRT1阻害剤であるSirtinol,SIRT1の発現を選択的に抑制する合成siRNAによるヒトMFH細胞株に対する抗腫瘍効果についてin vitroの実験系で検討したところ,Sirtinol添加により濃度および時間依存性にヒトMFH細胞株の増殖能が低下し,同様にSIRT1選択的siRNA導入によるMFH細胞の増殖能低下をみとめた.しかし,SIRT1機能賦活剤であるResveratrol添加では有意な細胞増殖能の変化をみとめなかった. 以上から骨軟部腫瘍におけるSIRT1発現の重要性およびSIRT1を標的とした治療の有効性が示唆され,今後もin vitro,さらにin vivoでの検討を続ける予定である. 本年度は,これまでの検討に加え,骨軟部肉腫細胞を背部皮下に移植した腫瘍モデルマウスに対するSIRT1機能抑制のin vivoでの抗腫瘍効果についても検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては,本年度までに当院で手術時に採取した良性および悪性骨軟部腫瘍組織検体におけるSIRT1の発現の評価および検討を行い,さらにSIRT1機能賦活剤あるいは阻害剤,そして遺伝子あるいは合成siRNA導入によるSIRT1の発現変化によるヒト骨軟部肉腫細胞株に対する効果について検討を行う予定であった.これらの評価・検討についてはある程度行うことが可能であったが,得られる組織検体数の不足やin vitroでの遺伝子導入の効率不良などの問題により,評価できた検体数はやや不足していると思われる.またin vivoでの検討項目についても可能な範囲で開始する予定であったが,これも開始出来ていない. 以上の観点から本研究の遂行に関し,現在までの達成度はやや遅れているものと判断し,本年度以降の遂行に支障を来す可能性があると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策については,これまでの問題点について熟考して遂行していかなければならないと考える. in vitroの実験系においては,細胞株種の減数,遺伝子あるいはsiRNA導入方法,効率の確立について既に検討しており,今後支障を来すことなく行えるものと考える.しかし,本年度はin vivoでの実験系が中心となるため,これまで他の実験系で行ってきた知識,方法を応用して十分な注意のもとに行う必要性があると考えている.
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