研究課題
ヒストン脱アセチル化酵素SIRT1は強力な抗アポトーシス作用を有することで知られ,近年「長寿因子」として注目されている.しかし,癌など悪性腫瘍においては,その抗アポトーシス作用により腫瘍増殖を増強させ,悪性度に関与しているという報告がある.本研究では,前年度までの検討で,良悪性骨軟部腫瘍組織におけるSIRT1の発現についてリアルタイムPCR法による定量的な検討を行い,良性腫瘍である神経鞘腫と比較して悪性腫瘍である骨肉腫や悪性線維性組織球腫(MFH)においてSIRT1の発現が有意に高いことが分かり,in vitroにおいて,SIRT1阻害剤,SIRT1選択的siRNAがヒトMFH細胞株において細胞増殖抑制効果を示すことが明らかとなった.以上から骨軟部腫瘍においてSIRT1の発現が腫瘍の悪性度に関与していることが示唆された.当該年度においては,SIRT1選択的siRNA導入後MFH細胞をヌードマウスに皮下移植したモデルマウスを作製し,腫瘍形成能に対するSIRT1の影響についての検討を行ったが,SIRT1選択的siRNA,コントロールsiRNAともにsiRNA導入後細胞のマウスへの生着,腫瘍形成が不良であり,十分な検討を行えなかった.そこでSIRT1がミトコンドリア遺伝子の発現抑制を来し,ミトコンドリア系アポトーシスを阻害するという報告のもと,ミトコンドリア機能に着目しての検討を追加した.良性腫瘍と比較して悪性腫瘍ではミトコンドリア関連遺伝子の発現が有意に少なく,ミトコンドリア発現に重要な因子であるPGC-1alphaをプラスミドを用いてMFH細胞に過剰発現させることで,ミトコンドリア量を増加させ,ミトコンドリア系アポトーシスへ誘導できることを明らかとした.以上の検討を踏まえ,ミトコンドリアを中心としたSIRT1の機能と骨軟部腫瘍との関連について検討中である.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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