これまで我々は、2型糖尿病が骨密度とは独立した骨折危険因子であること、ならびに標準的な骨強度の評価法である骨密度ではその強度が推定できないことを明らかにしてきた(J Bone Mineral Res)。原発性骨粗鬆症では動脈硬化と骨密度に関連があることから、動脈硬化が2型糖尿病における骨折リスクとなりうるかを臨床的に検討した。 その結果、腎機能が基準範囲内である2型糖尿病において、性別に関わらず頸動脈エコーで計測される内膜中膜複合体(IMT)の増加が、椎体骨折リスクの増加と関連することを見いだした。またMonckeberg型の血管石灰化の指標である腹部大動脈の石灰化も同様に椎体骨折と関連することを見いだしている。 これらの結果は動脈硬化と骨折に密接な「骨血管連関」が存在することを支持するものである。いずれも骨密度とは独立して椎体骨折と関係しており、動脈硬化の病態が骨質劣化をもたらし骨強度低下につながることが示唆され、本研究の目的である骨質と動脈硬化の関連が臨床的に存在することが明らかにされた。 これらの研究成果は日本糖尿病学会、日本骨代謝学会、米国骨代謝学会において報告し、論文に成果をまとめる予定である。 この研究成果を元に平成23年度は当初の計画通りに、動脈硬化との関連がある糖化終末物質(AGEs)およびその分泌型受容体(esRAGE)を用いて、臨床的にPTH分泌との関連や、骨芽細胞を用いて骨質との関連の研究を進めてゆく計画である。
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