BP関連性顎骨壊死における骨吸収のメカニズムは明らかではない。そこで、BPが、間葉系幹細胞の免疫抑制能を低下させ、細菌感染による過剰な炎症が抑制できない為、炎症誘導性破骨細胞による骨吸収が誘導されているという仮説を検証する。本研究ではヒト骨髄間葉系幹細胞株を用いて、ビスフォスフォネート(BP)関連性顎骨壊死における破骨細胞分化に、骨髄間葉系幹細胞の機能低下が関与しているかどうか検討する。BPが、骨髄間葉系幹細胞の免疫抑制能の低下を介して、炎症性の破骨細胞分化を促進するか明らかにする事を目的とした。破骨細胞に分化する単球系の細胞として、マウス由来RAW264Dを用いた。これをRANKL、TNF-αで分化させ、TRAP染色を行った。また、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)と共培養させ、同様にTRAP染色を行った。TRAP陽性かつ多核の細胞を破骨細胞として定量化し、評価した。また遺伝子発現はRT-PCRで解析した。RAW264D細胞は、RANKL及びTNFαの濃度に依存して、破骨細胞へ分化することをTRAP染色により確認した。このRANKL-TNFαによる破骨細胞分化を、hMSCは細胞濃度に依存して抑制した。hMSCによる破骨細胞の分化制御を調べる為に、オステオプロテゲリンやTGFβの発現を調べた結果、TNFα処理によりこれらの遺伝子発現は一過的に誘導された。これらの結果は、炎症性破骨細胞分化に対して、hMSCがOPGなどの発現を介して、調節していることを示唆した。また、ビスフォスフォネートの一種のrisedronateはTNFα-RANKLによる破骨細胞分化を顕著に抑制した。これらの結果は、炎症性サイトカインによる破骨細胞形成をhMSCが制御しうることを示した点で意義が有る。
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