研究概要 |
実験1.Sd候補遺伝子を適正に破壊できたと考えられるSd-ES細胞よりノックアウトマウスを作出した。作出されたSd候補遺伝子破壊マウスの表現型を検討したところ、ゲノム変異を持っているにも関わらず、Sd変異マウスの表現型である脊椎欠損、鎖肛、腎臓欠損が消失していた。実験2.実験1.で得られたノックアウトされたSd-ESクローンのSd候補遺伝子に対してlacZノックインマウスを作出した。作出されたlacZノックインマウスを利用してSd候補遺伝子の発現をモニタリングしてみると、その発現は胚の脊索、cloaca、mesonephrosで主に検出された(正常発現組織は、膵臓の原基と神経管の一部である)。実験3.Sd変異マウスにおける脊椎発生異常における分子イベントを明確にするため、野生型,Sdホモ接合体の9.5,10.5,11.5日胚からRNAを抽出し、関連遺伝子群に対して定量RT-PCR法解析を行うことでCaudal regressionの病態を検討した。実験4.Sd変異マウスの表現型に関係する分子の同定のため、E10.0胚よりRNAを抽出し、アジレント社のアレイを利用した遺伝子発現プロファイリングを施行した。上記の研究成果よりSd候補遺伝子のノックアウトマウスの表現型を確認できた事で、Sd変異マウスの表現型の原因は、このSdゲノム変異の影響を受けたこのSd候補遺伝子であることを示すことが出来た。また、その候補遺伝子のlacZノックインマウスの作出によりSd候補遺伝子が胚発生時期の脊索、cloaca、mesonephrosで異所性発現することでSd変異マウスの表現型の原因となっていることを強く示唆する結果が得られた。上記研究成果による原因ゲノム変異/原因遺伝子の確定と機能解析は、脊椎疾患、脊椎発生の理解に貢献し、Sd変異マウスの表現型に相似するヒト疾患の原因や病態の糸口になると考えられる。
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