研究概要 |
平成23年度研究実施計画に基づき、以下の研究を行った。 1ステロイド性大腿骨頭壊死症発生におけるToll-like receptors(TLR)signaling pathwayの関与の証明 ラットに対し、生理食塩水もしくはTLR4,7,9のリガンドであるLPS,イミキモド、CpG-DNAの単回投与後24時間でメチルプレドニゾロンの投与を行い、2週後に屠殺、組織学的検討を行った。その結果、生理食塩水及びメチルプレドニゾロン投与群では、大腿骨頭壊死症の発生を認めなかったが、各TLRリガンド及びメチルプレドニゾロン投与群では、いずれも大腿骨頭壊死症の発生を認めたことから、ステロイド性大腿骨頭壊死症の発生には、TLRを介した自然免疫機構が関与していることが明らかとなった。 2ステロイド性大腿骨頭壊死症の発生機序におけるステロイドの役割の解明 上記のように、ステロイド性大腿骨頭壊死症の発生機序には自然免疫機構が関与することが明らかとなったが、ステロイドの役割は明らかでない。今回、ステロイドの役割を明らかとするため、TLRのリガンド投与後に生理食塩水もしくはメチルプレドニゾロンの投与を行い、解析を行った。その結果、TLRのリガンドによって活性化された転写制御因子NF・kBおよびIRF7はメチルプレドニゾロン投与により、NFkBの活性は有意に減弱したが、IRF7の活性に変化を認めなかった。このことから、ステロイド性大腿骨頭壊死症は転写制御因子活性の変動によって発生することが明らかとなった。 3ステロイド性大腿骨頭壊死症の発生機序に与える肝臓機能の影響の解明 ステロイドの代謝は肝臓でおこなわれることから、動物モデルにおいても肝臓を中心に解析したところ、上記の結果が得られた。このため、臨床例での肝機能とステロイド性大腿骨頭壊死症の関係性について検討した結果、大腿骨頭壊死が発生しない患者ではステロイド投与直後に肝機能が上昇し、発生患者では肝機能が上昇しないことが明らかとなった。
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