in vivoパッチクランプ法にて脊髄膠様質ニューロンから興奮性シナプス後電流(EPSC)を記録した。記録細胞の受容野を同定し、末梢皮膚刺激試験を行った。ドーパミン投与下では非存在下と比較して触刺激によるEPSCの発生頻度、基線とEPSC波形の形成する面積は有意に減少した。疼痛刺激でも同様にドーパミン存在下ではEPSCの発生頻度、面積は有意に減少した。また、電流固定法で活動電位(AP)、興奮性シナプス後電圧(EPSP)に対する作用を観察すると、ドーパミン存在下ではAP、EPSPの発生頻度ならびに面積が有意に減少した。さらに、前もって視床下部A11領域に微小刺激電極を刺入しておき、脊髄膠様質ニューロンからEPSCを記録中にA11領域を電気刺激すると、ドーパミンを灌流投与したときと同様に、外向き電流の発生、ならびにEPSC発生頻度・振幅の減少が観察された。また、このA11刺激によって発生する外向き電流とEPSCの抑制効果はともにD2-like受容体拮抗薬を脊髄に灌流することで阻害された。今回の研究結果から、ドーパミンは脊髄レベルにおいて実際の皮膚侵害・非侵害刺激に対して抑制作用を有することが証明された。さらに視床下部A11領域を電気刺激するとドーパミンを脊髄に灌流したときと同様の応答が観察された。これらの結果から、末梢皮膚刺激が後根神経節を経由して後角感覚ニューロンに伝わるが、その刺激は視床下部A11ニューロンから投射されるドーパミンによってシナプス前性・後性に制御を受けている、つまり、ドーパミン作動性神経系は下行性疼痛抑制系として機能していることが示唆された。
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