アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)はアルコール代謝の主経路で働く重要な酵素であり、日本人の約半数がALDH2酵素遺伝子に変異(dn-ALDH2)を有している。dn-ALDH2型の人の骨は骨粗霧症のリスクが上がることが報告されているが、ALDH2遺伝子変異と骨粗鬆症との関連性やその分子メカニズムについては解明されていない。 本申請研究では、ドミナントネガティブ型ALDH2遺伝子変異モデルマウス(ALDH2-DAL)を用い、遺伝子の変異と骨粗鬆症との関係についてinvivo及びin vitroの両面から検討した。骨密度測定、及び軟X線写真による解析から、ALDH2-DALの骨は野生型マウスと比較して顕著に脆弱化していることを示した。同時に、皮質骨幅、骨梁幅、石灰化速度の有意な低下を骨形態計測より示した。また、ALDH2-DALの破骨細胞の分化形成には変化はなかったが、骨芽細胞の分化形成能が著しく低下することを細胞染色及び骨芽細胞分化マーカーの発現量の低下を定量的RT-PCRによって確認した。骨芽細胞の形成阻害の一方で、脂肪分化転写因子や脂肪分化マーカーの発現が有意に増加することを示した。骨形成能低下をもたらす原因分子を検討した結果、ALDH-DALの血中におけるアセトアルデヒド濃度の有意な上昇と共に、骨芽細胞において過酸化脂質タンパク質である、ヒドロキシノネナール(4HNE)の過剰な蓄積を確認した。これらの結果はdn-ALDH2を有する人の骨髄由来骨芽細胞においてもALDH-DAL骨芽細胞と同様の傾向を示した。本研究によってALDH2遺伝子の変異は低代謝回転型の骨粗鬆症を示すリスクファクターとなることを明らかにした。
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