【背景】今まで我々は、脊髄損傷モデルにおける神経幹細胞(NS/PCs)移植療法の有効性を報告してきた。運動機能回復メカニズムには、移植細胞によるNeural circuitの再形成、再髄鞘化、栄養因子の供給などが提唱されてはいるが、結論は出ていない。本研究で先天性脱髄マウスであるshiverer mutantマウスの胎仔由来NS/PCを用いて移植細胞による再髄鞘化の重要性を解析した。【方法】髄鞘形成不全shiverer mutantマウスの胎生14.5日胎仔線条体からNS/PCを採取し、野生型NS/PCとの比較を行った。in vitro:shi-NS/PCの増殖能、分化能を評価した。in vivo:shi-NS/PC及びwt-NS/PCをマウス脊髄圧挫損傷モデルへ損傷後9日目に移植した。【結果】in vitro:shi-NS/PCはTuj1^+のニューロン、GFAP^+のアストロサイト、CNPase^+のオリゴデンドロサイト(OGC)への分化は認めたが、MBP^+成熟OGCへは全く分化しなかった。In vivo:wt-NS/PC群では有意な機能回復を得たが、shi-NS/PC群では得られなかった。免疫電顕像において移植されたshi-NS/PCは損傷中心部・周辺部へ生着し、wt-NS/PCと同様にH u^+のニューロン、GFAP^+のアストロサイト、APC^+のOGCへの分化は認めたが、wt-NS/PC群では認められる移植細胞由来のMBP^+のミエリン鞘への分化は全く認められなかった。【考察】shi-NS/PCはin vitro、in vivoにおいてニューロン・アストロサイトに分化したが、shi-NS/PC移植により機能回復は得られなかった。本研究により移植細胞によるMBP^+の正常なミエリン鞘形成すなわち再髄鞘化が機能回復に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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