研究概要 |
われわれは神経幹細胞移植を主軸とした脊髄再生に取り組み、移植細胞が機能回復に寄与することを報告してきたが、そのメカニズムは不明である。一方、マウスES細胞やiPS細胞由来の神経幹細胞の実験において移植細胞の再髄鞘化とglial supportが重要であることを証明し、報告してきた(Kumagai、et al,2009.,Tsuji,et al,2010)。しかし、これまでに髄鞘をin vivoで評価する方法はなく、新たなtoolの開発が期待された。そこで損傷脊髄における組織の微細な変化を捉えるために、拡散MRIの先進技術であるq-spaceイメージングを導入し、髄鞘を特異的に描出する"Myelin map"を開発した H23年度の髄鞘形成不全mutant miceと霊長類common marmoset化学的脊髄損傷モデルを用いた実験によって、Myelin mapが確かに髄鞘の情報を可視化していることが証明された。本年度の研究の目的は、Myelin mapが圧挫損傷においても髄鞘の情報を正確に描出できることを確認すると同時に、世界ではじめての霊長類の脊髄損傷モデルにおける同種神経幹細胞移植を実現し、Myelin mapで評価することによって脊髄再生のメカニズムの一端を解明することである。本研究は脊髄損傷の病態解明に役立つだけでなく、現在有効な治療法のない神経疾患の新規治療開発に結びつくと考えられ、将来的に世界に広く普及する可能性のある重要性の高い研究である。 研究目的、研究実施計画は以下のように予定のすべての研究を遂行した。 (1)霊長類脊髄圧挫損傷における脱髄の過程をMyelin mapで詳細に解析できた。 (2)common marmoset E135脊髄由来の神経幹細胞を圧挫損傷脊髄に移植したところ、著しい移植細胞による再髄鞘化を確認できた。
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