研究概要 |
我々はこれまでに、コモンマーモセット脊髄損傷モデルの作製、および評価系を確立しており、亜急性期におけるヒト胎児由来神経幹細胞移植の有効性を報告している。しかしながら、ヒト胎児からは少量の細胞しか得られず、倫理的にも問題がある。そこで、ヒトES/iPS細胞由来神経幹細胞を脊髄損傷モデルマウスに移植し、その有効性を確認した。しかし、異種間での移植のため、厳密に安全性、特に腫瘍化の問題を評価することは難しい。本研究はコモンマーモセットES/iPS細胞由来神経幹細胞を、霊長類であるコモンマーモセット脊髄損傷モデルに移植する同種間移植により、詳細に神経幹細胞移植の有効性、特に安全性を評価することを目的としている。 我々はすでに共同研究者の岡田らによって確立された方法で、マウス/ヒト ES細胞を神経幹細胞へと分化誘導し、培養することに成功している(Okada, et al.Stem cells,2008)。この方法をもとに、コモンマーモセットES/iPS細胞から胚葉体(Embryoid Body;EB)形成を介して神経幹細胞へと分化誘導する方法の開発を行い、レチノイン酸などの神経誘導因子をさまざまな濃度で加えることで、より神経幹細胞を多く含むEBを形成する条件を決定した。そしてEBから一次ニューロスフェアを形成し、二次ニューロスフェア、三次ニューロスフェアと継代することによって、神経幹細胞を選択的に増殖させることに成功した。得られたそれぞれのニューロスフェアは7-10日間、接着培養を行い、神経細胞へと分化させ、免疫細胞染色とRT-PCR法により、in-vitroでの分化傾向の詳細な解析を行っている。
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