近年、多くの臓器でその恒常性維持に内在性幹細胞・前駆細胞の役割が注目されている。また幹細胞の可塑性維持やメンテナンスに周囲の微小環境、いわゆるニッチが重要であることも多数報告される。 本発明の目的は、椎間板NP内における幹細胞性質を持つ細胞集団を特定するための表面マーカーを探索すること、そしてNP組織中の幹細胞ニッチを同定しヒトにおける椎間板の加齢変化におけるNP内在性幹細胞の意義を見出すことなどを通じて、単離された椎間板NP幹細胞ないし前駆細胞、ならびにその培養方法、用途などの周辺技術を提供することにある。 本年度の結果。球状コロニー形成髄核細胞のクローン形成能 クローン形成能と球状コロニー形成能は造血幹細胞、神経幹細胞、ES細胞の特徴である。このような特徴を持つ細胞集団が椎間板髄核内に存在するか否かを検証するため、C57BL/6マウス尾椎椎間板より採取したNP細胞をメチルセルロース上で培養したところ複数の付着型と球状型コロニーの導出を認めた。10日間の培養で大多数のコロニーが付着型であり、付着型:球状型の比率は3.5:1であった。我々はこの球状型コロニーをCFU-NPと命名した。球状型コロニーを構成する細胞集団を特定するために数多くの表面マーカーにつきフローサイトメトリーを用いて検討したところ、Disialoganglioside GD2とTie2と呼ばれるマーカーを発現する少数の細胞集団に細胞増殖能が高いことが判明した。GD2がCD24陽性細胞の一部に発現し、.GD2+CD24+から球状型コロニーの導出を確認、GD2-CD24+細胞からの導出は認められなかった。さらに3-4%の少数のNP細胞がtyrosine kinase receptor Tie2陽性であり、のちにGD2+細胞へと分化した。フローサイトメトリーの結果をまとめるとTie2+GD2-細胞が10.2±2.9%のTie2+GD2+細胞を導出し、やがてTie2-GD2-CP24+cellsへと最終分化するという分化傾向にヒエラルキーが存在することが判明した。
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