我々は、椎間板内の幹細胞性質を持つ細胞集団を特定するための表面マーカーの探索および幹細胞ニッチを同定しヒトにおける椎間板の加齢変化における内在性幹細胞の意義を見出すことを目的に本年度研究を行った。その結果、骨髄、皮膚、角膜、神経など多くの体性幹細胞が示す特徴である、球状型コロニーにつきマウス椎間板髄核で検証を行った。そこから導出される付着型コロニー以下NP-CFU-Fと球状型コロニー以下NP-CFU-Sの比率はおよそ7:2とNP-CFU-Sはマイナー集団であった。機能面を比べるとNP-CFU-SとNP-CFU-Fでは最終的に導出できる2型コラーゲンや軟骨性プロテオグリカンの合成細胞数が定量的な評価にて、3-6倍高かった。そこでNP-CFU-S導出できる細胞を特定できないかと考え、様々な幹細胞関連マーカーをFACSにて解析した。成熟髄核細胞のマーカーと報告のあるCD24を指標にし、解析したところ神経系および間葉系幹細胞のマーカーであるganglioside GD2陽性細胞で高い増殖能力示され、NP-CFU-S形成率が最も高いことが判明した。さらにその上流には造血幹細胞マーカーであるTie2陽性細胞が存在し、経時的な変化では数%のTie2陽性細胞からCD24、GD2陽性細胞が導出出来、プライマリーで74%いたCD24+は継時的に消失、新たにGD2陽性細胞からCD24+細胞が供給されることが判明した。そこでヒト髄核細胞で検証したところTie2陽性細胞はGD2陽性細胞を供給するが、GD2陽性細胞はTie2陽性細胞へは戻らず、さらにGD2陽性細胞からCD24陽性細胞へ成熟化して行く、不可逆的なマーカー発現変化がヒトでも確認された。すなわち椎間板髄核細胞では、ほとんどの成熟椎間板髄核細胞は得意的マーカーを示さずsenescentであり、CD24が成熟分化に近いマーカーとして存在、また球状コロニーを形成し増殖能力の高い細胞のマーカーとしてGD2、さらにそれを導出するTie2とマーカーにより分化程度にヒエラルキーが存在し不可逆的である可能性が示され、今後、椎間板再生医療に有益な情報になる情報と考えられた。
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