脊髄損傷の治療過程において運動機能の改善が期待される一方、神経幹細胞移植に付随した異痛症(Allodynia)の発生が知られている(Nat.Neurosci.2005)。本研究はfunctional MRIにより神経因性疼痛に関する中枢神経メカニズムを明らかすることで、疼痛ケアを含めた新規治療法の開発に結びつけることを目的としている。 まず、手法として確立されたホルマリンテスト(Pain 1977)による疼痛モデルラットを対象としたfunctional MRIを計測し、二次感覚野、視床、帯状回皮質など痛みに関する領域に賦活を認めた。また、ホルマリンモデルは2相性の反応を示し、functional MRIにおいても、応答に違いが見られた。 さらに、末梢神経に対する電気刺激の周波数を変えることで各末梢神経繊維特異的な脱分極を誘発できることが知られている(Anesthesiology 2006)。そこで、functional MRIを用い、マウス前肢に対し特定の周波数による末梢神経刺激を行った。 これにより触圧覚を司るといわれるAβ線維を主に脱分極させる2000Hzの刺激では、対側の一次感覚野にのみ賦活を認めた。また、一次疼痛を伝導するAδ線維を主な標的とした250Hzの刺激では対側の一次感覚野、二次感覚野、痛みに関する領域である前帯状回皮質に賦活を認めた。さらに、二次疼痛や温冷覚を支配するAβ線維を主に対象とする5Hzの刺激では、一次感覚野、前帯状回皮質に賦活を認めた。 今後、外科的損傷を加える神経因性疼痛モデルやマウスモデルの利点である遺伝子改変マウスを用いてfunctional MRIによる疼痛機序を明らかにすることで、脊髄損傷における疼痛ケアを含めた新規治療法の開発に結びつけることができる。
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