研究概要 |
われわれは神経幹細胞移植、神経栄養因子、2次損傷の抑制、リハビリテーションなど様々なストラテジーを用いて脊髄再生プロジェクトを推進してきた。前臨床研究においては運動機能の回復を実現し、まもなくiPS細胞の臨床治験も開始される予定である。一方、脊髄損傷後のallodynia(通常痛みを引き起こさない刺激によって生じる痛みと定義される)は臨床においても大きな問題であるが、これらに対しては未解決のままである1本研究の目的は、マウスのfunctional MRIを確立し、神経因性疹痛に関する脳内メカニズムを明らかにすることで、allodyniaに対する新規治療法の開発の基礎を築くことである。 前年度の研究により、知覚に関する末梢神経線維i(C,Aδ,Aβfiber}の断面積、不応期などの違いを利用し、刺激の周波数を変えることで知覚線維を選択的に刺激し、それぞれ異なった脳活動を観察した。Aβ線維に対する刺激の伝達経路は主に脊髄視床路である一方、痛みに関するAδ、C線維の伝達経路はACCに賦活が見られたことから、脊髄網様路も関与していることが考えられる。 本年度は、雄のC57B1/6マウスに対して、L5神経切除による神経因性落痛モデルであるmodified Chungmodel(Kim and Chung 1992)を作製し、健常マウスと比較した。 その結果、健常マウスに対する2000Hzの刺激では対側のS1にのみ賦活を認めたが、神経因性疹痛モデルマウスに対する同様の刺激は、S1に加え、ACCにも賦活が認められた。通常痛みを引き起こさない2000Hzの刺激で痛みに関するACCに賦活が見られ、Behavior analysisにおいても2000Hzの刺激に対する閾値が低下していることから、本結果がallodyniaを表していることが証明された。
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