麻酔科医師は他科の医師に比べて直接薬剤を使うことが多い。中でも吸入麻酔薬であるセボフルランは幅広く使用されている。セボフルランはそのほとんどが未変化体のまま速やかに呼気中に排泄されるため身体への蓄積性がなく、慢性毒性の評価はほとんどされていない。 そこで今回、麻酔科医師を対象に遺伝毒性試験の一つであるコメットアッセイを用いて毒性を評価することとした。試料は末梢血とし、血液中のリンパ球を分離して試験を行っている。 対象者は山形県内の麻酔科医師とし、すでに本研究の概要を説明してほとんどの麻酔科医師から内諾を得ており、今年度も引き続き調査を継続していく予定である。 また同時に各手術室においてセボフルラン濃度を定点測定する。各手術室に数か所の吸引管を設置し、活性炭を用いてセボフルランを吸着させる。回収後ガスクロマトグラフィーで測定して作業環境を評価し、慢性毒性との相関を評価する予定である。 さらに麻酔科医師を対象として自記式質問票調査を施行する。年齢・性別などの背景のほか、既往歴、喫煙・飲酒などの生活習慣に関する項目、麻酔の経験年数やセボフルランの使用頻度、挿管チューブの種類、またマスク着用や手洗いなど日常の麻酔業務における作業管理の状況についても詳細に調査し、慢性毒性との関連性を統計学的に検討する。 以上からセボフルランの遺伝毒性影響を多角的に評価し、より適切な作業環境・作業管理を提唱することを目的とする。
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