研究概要 |
平成22年度計画として、【目的1】脳機能画像法[functional MRI (fMRI)]を用いて、Cold Pressor Test(CPT:氷当てによる冷痛)による痛み刺激時の脳活動表現と、その男女差(性差)、臨床心理スコア(psychophysics)の性差を併せて調査し、痛みの性差とその背景を解明すると【目的2】代表的な味覚:甘味の持つ、甘味誘発鎮痛(Sweet-taste induced analgesia : SIA)効果の鎮痛機序と、SIAの性差を、fMRIを用いてヒトの大脳・脳幹レベルで解明し、鎮痛機序にも性差があるかどうか調査する、の2つを挙げており、その研究成果をNeuroReport誌においてpublishすることができた(Kakeda T, Ogino Y, Moriya F, Saito S. Sweet taste-induced analgesia : an fMRI study. Neuroreport 2010 ; 21 : 427-431.)。その具体的内容、意義、重要性は以下の通り:「甘みで癒される」ことは経験的によく理解できることだが、実は、心だけでなく身体的な痛みも癒されることを我々は最近のfMRI研究によって示すことに成功。痛み刺激を加える前に、甘みを摂取すると、主観的な痛み・甘味による情動変化と共に、痛み関連脳領域の活動が小さくなることを見いだした。なぜ甘味が、痛み受容に影響するのか。甘味摂取時には、やはり報酬系領域の活動を認めることから、同領域のドーパミン性、内因性オピオイド性の活動から脳幹下行性抑制系の活動につながり、痛み体験の修飾を生じている可能性を推察している。報酬系領域は、下行性抑制系と共に今後最も注目され、研究対象となるであろう。
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