fMRIを用いて前年度確立したCold Pressor Test(CPT)による痛み刺激時の男女差(性差)、甘味の持つ、甘味誘発鎮痛(Sweet-taste induced analgesia:SIA)効果の鎮痛機序を示した。甘味摂取時には報酬系領域の活動を認め、ドーパミン性・内因性オピオイド性の活動から脳幹下行性抑制系の活動につながり、痛み体験の修飾を生じている。報酬系領域・下行性抑制系は注目しているターゲット脳領域であり、今後の研究対象としている。加えて女性被験者も撮像し、鎮痛の男女比を精査した。 加えて、次の研究テーマにも踏み込み、準備段階のdataを取得した。具体的には、熱中症が毎年の社会的関心事になり、脱水状態の健康への悪影響は知られているが、体性感覚への影響を脳科学的手法で探求した。その結果、運動前後のPhysical dataでは、脱水状態では補水状態よりも大きく体重を失い(p=0.001)、有意な心拍数上昇(p=0.034)、より高めの鼓膜温(p=0.011)と高い尿浸透圧(p=0.02)を呈した。主観的なdataでは、被験者は脱水状態で有意に強い口渇感を訴えた。Kraepelin-test(計算テスト)では、脱水状態は補水状態に比して、計算作業量の低下が認められた。Cold pressor testは著明な「痛み関連脳領域」の活性化を認めたが、脱水状態は、痛み閾値の短縮と共に補水よりも大きく脳活動反応が見られた。、 さらに現在構想中である、機能的磁気共鳴画像:Functional Magnetic Resonance Imaging(fMRI)を用いて、線維筋痛症に代表される「慢性広範囲疼痛症候群」の脳活動表現を観察し、その病態の鍵となる中枢性(脳)機序を明らかにするプロジェクトを進捗中である。
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