敗血症性脳症における脳血管内皮機能に関してin vivoにおける研究報告はこれまでにない。我々はCranial Window法と呼ばれる、In vivoにおける脳血管内皮機能を評価する技術を用い、敗血症モデルラットにおける脳血管内皮機能を評価した。本年度は雄のSDラットの脳血管内皮機能を評価したが、LPS(リポポリサッカライド)静脈内投与4時間後まで、脳血管内皮細胞のアセチルコリンに対する反応性は維持されており、脳血管内皮細胞は障害されていないという結果を得た。これに対し、体血管のアセチルコリンへの反応性はLPS静脈内投与4時間後までは比較的保たれてはいたものの、有意差はないが軽度の反応性の低下傾向を認めた。この結果から、脳血管内皮は体血管と比べて障害されにくい可能性が示唆された。病態生理として、血液脳関門により、脳血管内皮が体血管と比べ保護されていることが推測されるが、脳血管内皮細胞が果たしてLPS静脈内投与後、何時間程度で障害され始めるのか、それとも全く障害されないのかが、問題点として浮かびあがってきた。もう少し、観察時間を長くする必要があると考え、パイロットとして観察期間を6時間にとってみたが敗血症モデルラットが死亡してしまい実験が成立しなくなってしまうという新たな問題を生じた。そこで雄のSDラットにおける実験を一旦、ここで終了し、雌のSDラットにおいて同様の実験を行い性差を検討することに本年度は研究をシフトした。雌のSDラットにおいても雄とおおむね同様の結果であり本実験法では性差を認めなかった。
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