手術後管理のうち、循環不全の早期回復が重要だが、末梢循環動態生理における"末梢神経系"の役割は不明である。昨年度、我々はラット、マウスの順に小動物での出血性ショックモデル作製を確立させた。続いて、末梢知覚神経に存在するTRPV1受容体のノックアウト(KO)マウスを手に入れ、繁殖させた。その後、Wild typeとKO typeのマウスを用いて、出血性ショック蘇生後24時間の生存率を評価した。Wild typeでは10%しか生存しなかったが、KO typeは40%であった。Wild typeと比較するとKO typeでは、出血性ショック後の蘇生により平均血圧の回復が認められた。またショック前と蘇生直後における臓器血流を測定すると、Wild typeでは、特に肝臓・脾臓・下大静脈の臓器血流が著明に低下認め、生存率に差が生じる原因の一つに、末梢循環不全が示唆された。今後は、KO typeの蘇生直後の臓器血流と、24時間生存し得たWild/KOマウスの24時間蘇生後の臓器血流を測定し、生存率への影響をさらに検討する。今年は特に、動物用超音波装置を用いた心機能評価(蘇生直後の心収縮力や心拍出量を測定)を行い、循環動態を総合的に検討する予定だが、KO typeマウスの1回当たりの繁殖数が当初の予想より少なく、in vivo実験が予定より遅れた点が昨年度の反省点である。今年も、KO typeマウスの繁殖状況に合わせて、動物実験を継続することになる。今年はさらに、昨年度からすでに採取・保存してある血液および組織を用いて、炎症性サイトカイン変化や炎症性の組織変化を検討する。また、昨年今年と得られた成果を、来年度開催される国際学会(Annual Conference On Shock)に投稿し、発表をめざす。
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