研究概要 |
周術期における患者管理の要諦は、麻酔技術を駆使して手術侵襲を受ける生体のホメオスターシス、とくに細胞レベルにおける酸素需給バランス、すなわちエネルギー需給バランスを保つことにある。この観点に立ち、低酸素誘導性転写因子1 (Hypoxia-Inducible Factor 1, HIF-1)を介した遺伝子発現、糖代謝におけるエネルギー需給バランス、細胞の酸素代謝の三者の相互関係について培養細胞、臓器を用いて周術期使用薬剤の影響を検討し、よりよい周術期管理法の開発のための基礎的なデータを得ることが本課題の目的である。 研究計画に則り研究を行い今年度は以下の研究成果を得た。 #1細胞酸素消費量のアッセイ系の確立 クラーク電極を用いた実験装置を用いて樹立細胞株,マウス肝臓由来初代培養系において酸素消費量をアッセイする実験系を確立した。 この実験系を用いて,数種類の静脈麻酔薬,局所麻酔薬が細胞の酸素消費量に直接与える影響を検討した。 #2レポーター細胞の樹立 HRE(転写因子HIF-1の結合部位)を用いて作成したレポータープラスミドを安定的に組み込んだ樹立培養細胞を確立した。 #3ミトコンドリア電子伝達系に着目したHIF-1活性の検討 細胞に供給された酸素の細胞内濃度は細胞での酸素消費つまりミトコンドリアの電子伝達系での酸素利用の程度によって決定されるはずである。このため様々なミトコンドリアの電子伝達系の阻害剤(Rotenone, antimycin,シアン化合物など)を用いHIF-1の活性化を検討した。
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