研究概要 |
脊髄レベルでの神経因性疼痛の成立に重要な役割を果たしている脊髄マイクログリア細胞(microglia)を研究の対象に選び、その活性化の機序をグリアの活動の"場"である脊髄内の酸素代謝、微小レドックス環境と関連つけて検討することにより,脊髄マイクログリア細胞の活性化における脊髄内レドックス環境が痛覚過敏症、異痛症などの成立に果たす役割を明らかにして治療への端緒をつかむことを目的としていた。 H23年度における樹立細胞株を用いた検討に続き本年度はマウス脳由来マイクログリア初代培養実験系を用いて以下の研究成果を得た。 #1マイクログリアの活性化の検討は、toll-like receptor,カンナビノイド受容体に加えてインテグリンなどの接着因子の細胞表面での発現、接着能,食食能を指標にした。活性化因子としては、ATP、炎症性サイトカイン、レチノイン酸を用いる。単球-マクロファージの分化活性化との類似性を視野にいれて,ホルボールエステル(PMA),活性化型ビタミンDを用いて検討した。この結果,マイクログリアの活性化にともない細胞内レドックス調整転写因子HIF-1の活性化が起こる事を見いだした。 マイクログリアの活性化の前後で、酸素消費量,代謝経路の変化を検討した。酸素消費量はクラーク電極を用いた機器を用いて行い、細胞内ATP、lactate,pyruvate含有を測定する実験系を確立した。さらにグルコーストランスポーター,各種解糖系酵素の発現量をアッセイする実験系を確立して実験結果を得た。 #2慢性疼痛モデルをラットを作成してマイクログリアの活性化を評価する実験系の立ち上げに着手してHIF-1の活性化を示唆する研究結果を得た。
|