研究概要 |
HCNチャンネルは、慢性痛の原因となる神経障害性痛においてビリビリとした痛みを引き起こす自発活動電位をコントロールしている。本研究では、神経損傷時の中枢神経系におけるHCNチャンネルの働きを明らかにし、特に遺伝子多型に注目して、そのチャンネル機能を制御することによって自発活動電位を抑え、神経障害性痛の遺伝子治療に応用することを目的とする。23年度は、アメリカ合衆国ウィスコンシン大学マディソン校に短期留学し、ペースメーカーチャンネルの遺伝子多型を発現したカエルの卵母細胞を用いて、電気生理学的検討を行った。正常なチャンネルを発現するRNAと,遺伝子多型チャンネルを発現するRNAを、1対1、1対2の割合で混合し、卵母細胞に注入し、24、48時間後に、2電極電圧クランプ法によって細胞膜上へ発現したチャンネルの電気生理学的特性を測定した。その結果、正常のチャンネルと遺伝子多型チャンネルを1対1の割合で混合した場合、正常のチャンネルを半分だけ発現させた場合よりも膜を通過する電流が少なくなることが明らかになった。これはつまり、遺伝子多型チャンネルは膜への発現は認めるものの、電気を通さないこと、正常のチャンネル機能を抑制することを示していると考えられた。また1対2で混合した場合の結果と合わせて、4つのサブユニットの内、1つだけが遺伝子多型チャンネルに置き換わった場合には電流を通すこと、2つが置き換わった場合には電流を通さなくなることが示唆された。これらの結果により、ラット痛みモデルに対して、ウイルスベクターを用いて遺伝子多型チャンネルを強発現、遺伝子導入する際の正常チャンネル、遺伝子多型チャンネルとの最適な比率(正常チャンネルが30程度)が明らかになった。
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