脳損傷時、活性化マイクログリアが産生するサイトカインや一酸化窒素(NO)は脳障害増悪に関与する。よって、脳低温療法によるニューロン保護効果には、マイクログリアからのこれらの神経傷害性因子産生を軽減する機序が考えられる。マイクログリアに発現するToll様受容体(TLR)は病原体非存在下で、損傷細胞から遊離・放出される内因性物質によって活性化され、神経傷害性因子産生に関与する。本研究では、TLR3活性化マイクログリアのサイトカイン(IFN-β)とNO産生に低温が及ぼす影響を調べた。マイクログリアをTLR3シグナリング活性化因子(Poly(I:C))で刺激し、33℃および37℃下で培養すると、IFN-βとNO産生は、37℃に比べ33℃では低値を示した。また、IFN-βとNOは濃度依存的に、ニューロン様PC12細胞死を誘導した。以上の結果は、脳低温療法はTLR3活性化マイクログリアのIFN-βとNO産生を軽減し、ニューロン死抑制効果(ニューロン保護効果)をもたらすことを示唆している。また、本研究は、急性重症脳障害に対する効果的な治療戦略として、マイクログリアのTLR3シグナリング-IFN-β/NO経路がターゲットになる可能性も示している。
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