研究概要 |
これまでに我々は、イソフルランを投与されたマウスにおいて、複数のタンパク質がO-Linkedβ-N-Acetylglucosamine (O-GlcNAc)により修飾され、心筋保護効果をあらわすことを明らかにした。心筋プレコンディショニングのシグナル伝達の最終到達地点としてmitochondrial permeability transition pore (mPTP)が知られており、近年の報告でO-GlcNAcとの関連が示された。本研究はイソフルランのO-GlcNAcを介したmPTP開口に及ぼす影響を検討した。 マウスの遊離心筋細胞をイソフルランに暴露後、calcein AMと塩化コバルトでミトコンドリアを蛍光染色し、過酸化水素により酸化ストレスを与えた。イソフルラン投与で蛍光強度の減弱が抑制された(60.5±9.2% vs.85.6±4.1% of baseline, P<0.05)が、O-GlcNAc transferase阻害剤であるアロキサンを前投与することによってその効果は棄却された(57.2±6.9% of baseline)。mPTPを構成するタンパク質であるvoltage-dependent anion channel (VDAC)がイソフルラン投与により、O-GlcNAcで修飾されることを免疫共沈降法によって明らかにした。また、酵素法によっても確認した。 mPTPの構成要素であるVDACはイソフルラン投与によりO-GlcNAc化される。それを介してmPTPの開口が抑制され、心筋保護効果をあらわす可能性が示唆された。
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