麻酔したブタを用いて、頚動脈-左前下行枝バイパスを作製した。バイパス回路を12分間遮断し90分間解除することによって左前下行枝灌流領域を虚血再灌流させる心筋虚血再灌流モデル(心筋スタニングモデル)を作成した。虚血再灌流部位に一対の超音波クリスタルを植え込み局所心筋短縮率(%SS)測定し、心筋収縮力の指標とした。このモデルを用いて、強心薬PDE阻害薬milrinoneとカルシウム感受性増強作用薬revosimendanを心筋虚血直後または20分後から投与を行いスタン心筋の回復に与える影響について検討した。 1.milrinoneは虚血再灌流直後から投与した群では心筋スタニングからの回復を改善することが明らかとなった。この改善効果はp38MAPK阻害薬であるSB203580を投与することで消失した。また、虚血再灌流後20~90分投与群では改善が見られなかった。以上より、milrinoneは心筋スタニングに対して保護作用があり、その保護作用は心筋への直接作用ではなく、薬理学的ポストコンディショニング効果であることが証明された。 2.revosimendanは虚血再灌流後20~90分に投与した群では心筋スタニングからの改善を認めたが、虚血再灌流直後投与では心筋スタニングからの回復の改善を認めなかった。このことからrevosimendanの心筋スタニングからの回復改善作用は直接作用であることが証明された。 以上より、スタン心筋の心収縮力の回復を目的とする場合、虚血再灌流直後には薬理学的ポストコンディショニング効果が期待できるPDE阻害薬milrinoneが効果的で、時間が経過した場合はカルシウム感受性増強作用薬revosimendanが有効であることが証明された。この成果は論文Scand Cardiovasc J. 2013; 47:50-57に掲載された。
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