研究概要 |
オピオイド受容体は、μ受容体(μOR)、δ受容体(δOR)、κ受容体(κOR)に大別される。医療用麻薬である各オピオイド製剤は主にμORに作用して鎮痛効果を発揮する。近年、μORがδORと二重体化複合体(μ-δOR)を形成し、オピオイド耐性形成の分子機序に重要な役割を果たしていることが示されている。 超短時間作用性オピオイドであるレミフェンタニルは効果発現や消失が速やかであるため、安定した麻酔維持や速やかな覚醒に対して有用であり、全身麻酔中の投与に非常に適している。しかし、レミフェンタニル使用時の問題点として、急性耐性や痛覚過敏を生じることが指摘されている。これらのレミフェンタニルによる急性耐性や痛覚過敏の分子メカニズムを解明することは周術期の最適なオピオイド使用方法を確立する上で重要な課題である。そこで、レミフェンタニル投与後のμ-δORの細胞内局在の経時的変化を評価することとした。 すでに作製済みの蛍光タンパクを付加したオピオイド受容体cDNAs(μOR-VenusとδOR-Cerulean)を、BHK細胞にtransfectionした。24時間後,黄色蛍光タンパクVenus融合μORと青色蛍光タンパクCerulean融合δORを発現させたBHK細胞に、レミフェンタニル(10nM,100nM,1μM)を作用させた。予備実験で得られたμ-δORのagonistに対する反応から、レミフェンタニル投与後30分でinternalizationを、投与後180分でrecyclingを評価した。μ-δORの細胞内局在は共焦点レーザー顕微鏡を用い検討した。μ-δOR複合体形成はFRET現象をacceptor bleaching法で検出することにより確認した。 この結果、レミフェンタニルによるμ-δORのinternalizationおよびrecyclingは濃度依存性であることが明らかとなった。すなわち、レミフェンタニルが高濃度であるほど、internalizationは亢進し、recyclingは抑制された。今後、このデータをμOR単独の場合や各種薬剤併用下の場合と比較検討する予定である。
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