研究課題/領域番号 |
22791442
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
一ノ宮 大雅 長崎大学, 大学病院, 医員 (50404249)
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キーワード | 薬理学的ポストコンディショニング / 塩酸ファスジル / 糖尿病 |
研究概要 |
予測できない虚血イベントにも応用できるため、薬理学的ポストコンディショニング(ポスコン)法の開発は臨床的に非常に有用である。しかし糖尿病患者や高血糖状態においては、プレコン、ポスコンによる心筋保護作用が減弱するとされている。糖尿病患者の虚血性心疾患発生のリスクは高いため、糖尿病や高血糖に影響を受けない薬理学的ポスコン法の確立は重要である6Rh。Pho-kinase阻害薬である塩酸ファスジル(FH)は脳血管攣縮に対して臨床使用されているが、冠動脈疾患に対しても有用であるとされる。PI3Kinaseに作用してポスコン作用を発揮するとされているが、高血糖の影響に開しての検討はない。急性高血糖ラット心筋虚血再灌流モデルにおけるFHの心筋ポスコン作用について検討を行った。SDラットを対象とし、左冠動脈前下行枝を30分間閉塞したのち、120分間の再灌流を行った。低用量FH0.15mg/kg(LF)、高用量FH0.5mg/kg(HF)、ジアゾキサイド10mg/kg(DIA)を再灌流開始時に静脈内投与し、対照群(CON)と心筋梗塞サイズを比較した。また急性高血糖ラットモデルを作成し、各薬剤の心筋保護効果に与える影響に関して検討した。加えて、HFのポスコンに対するmKATP channel阻害薬である5-hydroxydecanoic acid (5HD)の影響についても検討した。LF、HF、DIAの心筋梗塞サイズは、CONと比較し有意に小さかった。高血糖下においてLF、DIAは心筋保護効果を示さず、HFは正常血糖下と同様に心筋梗塞サイズを減少させた。5HDはHFのPCを抑制した。以上のことから、FHのポスコンはmKATP channelの活性を介していること、高血糖はFHのポスコンを減弱させるが、HFは高血糖下においても心筋保護効果を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予測していた結果と実際の実験結果が異なったため。安定した実験手技を体得するのに時間がかかり、データ採取の開始が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画よりも実験の進行がやや遅れているためニコランジル、イソソルビドでの実験は行わず、塩酸ファスジルの分子細胞機構の解明に重点を置いて今後実験を継続する。
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