予測できない虚血イベントにも応用できるため、薬理学的ポストコンディショニング(ポスコン)法の開発は臨床的に非常に有用である。しかし糖尿病患者や高血糖状態においては、プレコン、ポスコンによる心筋保護作用が減弱するとされている。糖尿病患者の虚血性心疾患発生のリスクは高いため、糖尿病や高血糖に影響を受けない薬理学的ポスコン法の確立は重要である。Rho-kinase阻害薬である塩酸ファスジル(FH)は脳血管攣縮に対して臨床使用されているが、冠動脈疾患に対しても有用であるとされる。PI3Kinaseに作用してポスコン作用を発揮するとされているが、高血糖の影響に関しての検討はない。急性高血糖ラット心筋虚血再灌流モデルにおけるFHの心筋ポスコン作用について検討を行った。SDラットを対象とし、左冠動脈前下行枝を30分間閉塞したのち、120分間の再灌流を行った。低用量FH0.15 mg/kg (LF)、高用量FH0.5 mg/kg (HF)、ジアゾキサイド10 mg/kg (DIA)を再灌流開始時に静脈内投与し、対照群(CON)と心筋梗塞サイズを比較した。また急性高血糖ラットモデルを作成し、各薬剤の心筋保護効果に与える影響に関して検討した。加えて、HFのポスコンに対するmKATP channel阻害薬である5-hydroxydecanoic acid (5HD)の影響についても検討した。以上のことから、FHのポスコンはmKATP channelの活性を介していること、高血糖はFHのポスコンを減弱させるが、HFは高血糖下においても心筋保護効果を示すことが明らかになった。また塩酸ファスジルによるポスコンの機序解明としてCOX-2阻害薬であるNS398の影響を検討したところ、NS398の影響下においても塩酸ファスジルは保護効果を示し、COX-2を介さずに作用を発揮することが明らかになった。
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