新規抗酸化物質であるETS-GSは、体内でのレッドックス反応において重要な役割を有するグルタチオン、ビタミンE、タウリンを含む化合物であり、それぞれの物質の有効なプロドラッグとして開発された。現在、様々な病態の動物モデルで、ETS-GSの効果検討を行っており、本研究課題の脳の虚血再灌流障害に対する改善効果を検討するために、先立って必要な予備実験を行ってきた。まず、ETS-GSの投与法や濃度決定においては、腎、肝、下肢の虚血再灌流障害に対する検討の中で、静注モデル、皮下注モデルを用いて実験を行い、その結果、脳虚血(心肺停止)30分前のpre皮下投与での投与法を第1選択とすることとした。また、投与濃度は、1、10、100mg/kgを基本とし、ボーラス1回投与でも有意な効果が認められた、上述の虚血再灌流障害モデルから算出した。 さらに、ラット脳虚血再灌流障害モデルのプロトコールを決定した。本研究は、ETS-GSの、心肺停止蘇生後の高次脳機能障害を軽減する物質としての可能性を探ることである。従って、より臨床にそくした脳障害を人為的に作成する必要があったため、プロトコール作成に多くの時間を要した。全身麻酔下、外頚静脈からカニュレーションし、静注薬投与ルートとした。筋弛緩薬を投与し、呼吸停止後心停止となるが、その間に気管挿管を行う。7分の心停止後、蘇生処置としてエピネフリンおよび100%酸素での人工呼吸を行い、心拍再開をさせる。こうした過程で、controlモデルにおいて、蘇生の成功率を約7割(これまでの発表論文を参照とした)、各測定点で有意な脳の器質的変化をきたすような虚血再灌流のプロトコールを決定し、手技の確立と薬物投与法、投与濃度の決定を行った。 今後、このプロトコールをもとに、ETS-GSの効果を検討していく予定である。
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