1.培養アストロサイトにおける低酸素によるAQP4発現の変化 単純なアストロサイト培養系を用い、低酸素-再酸素化(虚血-再灌流)によってAQP発現がどのように変化するかを検討した。低酸素環境が作り出せる特殊チャンバーを用い、培養アストロサイトを低酸素状態(虚血)とした後、通常の大気に戻す(再灌流)ことを行った。その結果、mRNAとタンパク質の発現が低酸素により低下し、再酸素化により急速に上昇することが明らかとなった。虚血によるAQP4の二相性変化が確認された。 2.全脳虚血ラットにおけるAQP4発現の変化 心室細動誘発による心肺停止モデルの確立を試み、手技の安定化を図っている。すでに確立している凍結損傷モデルでAQPの発現を確認したところ、ウエスタンブロット法と免疫化学組織染色により虚血中心部の発現低下と周囲の発現低下を確認できた。また、損傷側脳の水分量の増加を確認した。障害により、AQP4が明らかに変化することが明確となった。 3.AQP4阻害薬の開発と培養i細胞における効果確認 アストロサイトにおけるAQP4の発現増強の機序として、転写因子NF-kBとp38襟PKの関与を再度確認した。そこで、NF-kBの阻害薬(SN-50)あるいはp38 MAPKの阻害薬(SB203580)をアストロサイトに投与して、(1)と同様に低酸素-再酸素化(虚血-再灌流)を起こし、AQP4の発現が実際に抑制されることをウエスタンブロット法にて調査したところ、AQP4の急速な発現上昇が抑制される傾向を得た。今後のさらなる検討が必要であるが、脳浮腫の調節ができる可能性が示唆された。
|