研究概要 |
既存の治療薬(抗コリン薬、抗利尿ホルモン等)は夜間頻尿に対する有効性が十分ではなかった。内因的メラトニンは加齢とともに減少するが、外因的メラトニン投与が夜間頻尿と睡眠障害をそれぞれ改善することが報告されている。我々はメラトニン脳室内投与が膀胱容量を増大させることを報告(Matsuta, J Urol, 2010.)しているが、睡眠を深くすることと膀胱容量を増すことで夜間頻尿の治療薬となり得ると仮定し、検討を行った。10週齢と24か月齢の雌性Sprague-Dawleyラットに慢性脳波電極を留置し、メラトニン(1.0×10^<-2>-1.0mg/kg)静脈内投与後の脳波を膀胱内圧と同時に記録、検討した。 24か月齢のラットにおいて、メラトニン1.0×10^<-2>mg/kg投与時に1.8倍、1.0×10^<-1>mg/kg投与時に2.3倍と、対照群と比較して排尿間隔を有意に延長させたが、基礎圧、排尿閾値圧、排尿時最大収縮圧には有意な変化を認めなかった。10週ラットにおいては、排尿間隔、基礎圧、排尿閾値圧、排尿時最大収縮圧のいずれにも有意な変化を認めなかった。排尿・蓄尿両相のデルタ波パワー値において、24か月、10週齢のラットのいずれも有意な変化を示さなかった。 今回の検討において、メラトニンはラットの睡眠深度に影響を示さなかったが、老齢ラットのみにおいて膀胱容量を増大させた。膀胱内圧に影響を与えないことから尿閉発生のリスクは少ないと考えられ、高齢者における夜間頻尿に対する有効性が示唆された。
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