研究概要 |
最近の申請者の研究により、癌抑制遺伝子REIC (Reduced Expression in Immortalized Cells)がコードするREICタンパク質の抗癌免疫活性化作用が明らかとなった。申請者らは、以前よりREIC遺伝子発現アデノウイルス(Ad-REIC)の腫瘍局所投与により、「癌細胞選択的なアポトーシス」に基づく抗腫瘍治療効果が得られることを証明している。本年度の研究では、難治性の表在性膀胱癌におけるAd-REIC剤とREICタンパク質の有用性を、アポトーシス誘導および抗癌免疫学的観点から検証し、癌選択的膀胱注入治療薬の開発の基盤となる研究を行った。具体的には、ヒト膀胱正常上皮細胞およびヒト膀胱癌細胞株(RT4, KK47, T24, J82, UMUC3, TCCSUP, 5637, HT1376)培養系において、Ad-REICおよびそのコントロールとしてAd-LacZを様々な濃度にて投与し、それぞれの細胞の細胞死誘導頻度を解析した。また、これらのin vitro実験の結果をもとに、同所性膀胱癌マウスにおけるAd-REIC剤を用いた治療の至適投与量を設定するためのin vivo実験系の確立に着手した。すなわち、ヌードマウス膀胱腔内にヒト表在性膀胱癌由来のRT4細胞を移植する、同所性表在性膀胱癌マウスモデルの作製に関する実験を行った。さらに、本申請研究に関連する研究として、精製REICタンパク質の細胞分化における機能の解析を進め、REICタンパク質が正常細胞の分化の過程において重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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