研究概要 |
尿道下裂のより深い理解と新しい治療法の開発のため、以下の2つの研究を行った。(1) モデル動物を用いた尿道形成時期の遺伝子解析による候補遺伝子の同定: 11週齢の妊娠Sprague-Dawleyラットに対し非ステロイド性抗アンドロゲン剤flutamide 7.5mgを妊娠15日目から連日3日間腹腔内投与し、尿道下裂モデルラットを作成した。尿道下裂モデルラットとコントロールである正常ラットの双方から、妊娠17日目に胎仔からペニスを採取した。採取した胎仔のペニスからtotal RNAを抽出し、マイクロアレイにより20,500遺伝子を解析した。マイクロアレイ解析で発現差の認められた候補遺伝子は、SYBR greenを用いた定量RT-PCR法により実際の発現に有意差があるかどうか確認した。候補遺伝子の中でも、Prolactin-induced protein (Pip)遺伝子に着目した。 (2) 同定した遺伝子の発現部位についてモデル動物とヒトにおいて確認: Pip遺伝子の発現部位を確認するために、ラット組織切片の免疫染色を行い、組織学的に確認した。陰茎包皮の表皮に発現を認めた。さらにPIPタンパクの定量的評価としてWestern blotを行い、尿道下裂ラットのペニスで有意に発現低下していることを確認した。ヒトにおける検討では、尿道下裂患者と包茎などのコントロール患者の手術検体においてもPipの発現を免疫染色で検討し、ラットと同様であることを確認した。
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