【目的】腎結石形成には結石マトリックス成分の1つであるオステオポンチン(OPN)が強く関わっている。OPNは多くの機能的アミノ酸配列をもち、それらが切断や重合するにより生理活性を生じる。私たちは、結石形成マウスにおいて、非切断型OPNは腎全体に分布しているが、切断型OPNは結晶の形成に一致して腎皮髄境界部に発現するという興味の深い現象を見つけた。そこで本研究では、切断型OPNにて露出されるアミノ酸配列(SLAYGLR)に対する中和抗体を作成し、腎結石の形成抑制作用を検討した。 【具体的内容】OPNのSLAYGLR配列を含んだ合成ペプチドで免疫されたマウスからモノクローナル抗体(35B6抗体)を作成した。この抗体を用いて、イヌ遠位尿細管上皮(MDCK)細胞を用いたIn vitro実験、8週齢C57BL/6雄マウスを用いたIn vivo実験を行った。 【結果】(In vitro実験)尿細管細胞にCOM結晶を暴露すると、細胞に結晶が取り込まれ、形態は膨化し崩壊するものの、OPN抗体投与により、結晶の尿細管細胞への接着、細胞の崩壊が抑制された。(in vivo実験)結晶形成量は抗体投与により容量依存性に低下した。結晶の微細構造は、WT群では、結晶が整然と放射状に成長し花弁状構造を示すのと比べ、抗体投与群では、結晶は放射状に形成されるも、内部が細かく砕けていた。透過型電子顕微鏡による尿細管細胞の構造は、WT群では管腔が拡張し、尿細管細胞に取り込まれる結晶を認めたが、抗体投与群、KO群においては、尿細管腔内に脱落組織は認めるものの、結晶形成は認めなかった。 【意義】切断型OPNに対する中和抗体を用い、結晶の尿細管上皮への接着を抑制することで、結石形成を抑制することに成功した。今後この研究成果を用い、分子標的治療の臨床応用ができると考えた。
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