研究の目的: 現在の膀胱がんの問題点は浸潤がんの治療と膀胱内再発の予防が挙げられる。その中で膀胱内再発の予防としてBCGまたは抗がん剤を用いた膀胱内注入療法が行われている。しかし膀胱内注入療法が無効で、膀胱内再発を繰り返す、または浸潤がんに移行する症例が存在する。現在のところ膀胱内注入療法の効果を予測するバイオマーカーは存在していないため、そのメカニズムを解明できれば治療方針の決定に大いに寄与できると考えた。一方、大腸菌による膀胱炎が慢性化するメカニズムとして、cAMPが関与しているのではないかと報告されている。大腸菌が膀胱粘膜に浸潤する過程において、cAMPを介し膀胱腔内への除菌が行われているとされている。そこで私たちは、BCG膀胱内注入療法無効例においては、cAMPを介した除菌が過度に行われ、十分な感染が行われず、BCGを介した免疫応答が引き起こされないのではないかと考えた。 研究実施計画: (1)in vivtroヒト膀胱がん細胞株RT4、5637、T24を準備し実験をスタートした。この細胞株はそれぞれGrade1、2、3である。これらの細胞培養液内ににBCG菌を散布し、BCG感染率を検討している。また培養液内にcAMP活性薬であるフォルスコリンを投与し、感染率の変化を検討している。現在薬剤の条件検討を行っている。その結果が出次第、細胞のタンパクを抽出し、cAMPを介した増殖経路の1つであるPKAのウエスタンブロットを行う予定である。 (2)in vivo BBN誘発膀胱がんモデルを作成中である。膀胱前がんが形成される12週よりフォルスコリンを投与していこうと考えている。
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