膀胱がんにおけるBCGの効果を予測する因子としてcAMPの関与を明らかにするため、以下の項目につき検討を行った。 1.ヒト膀胱がん細胞株RT4、5637、T24でのBCG感染率を測定した。 2.ヒト膀胱がん細胞株RT4、5637、T24でのPKAの発現をウエスタンブロット法で確認した。 結果は、high gradeのT24と比較し、low gradeのRT4の方が約3倍感染しやすい傾向を認めた。また、cAMPに関連する増殖因子であるPKAの発現をウエスタンブロット法で検討してみると、RT4と比較してT24の方が高発現していた。以上より、high grade cancer cellであるT24はcAMPの活性が高く、それによるBCGの感染率が低下していることが考えられた。BCG療法はBCGががん細胞に感染し、感染細胞に対する免疫応答によって抗腫瘍効果を発揮する。私たちはBCG無効例はがん細胞におけるcAMPの活性によってBCG菌が膀胱内腔にexocytosisを起こし、結果としてBCG菌の感染および感染細胞への免疫応答が十分行われず、抗腫瘍効果が減弱すると考えた。現在のところ私たちの仮説を裏付けるように、浸潤を起こしやすいhigh grade cancer cellではPKAの活性が高く、BCG感染率も低いことから、cAMPを介したexocytosisが引き起こされていることが推察された。 次にcAMP阻害作用を持つフォルスコリンを投与し、BCGの感染率に変化があるかどうかの実験を行う予定であるが、現在安定した感染率の定量が行えておらず、単にZiehl-Neelsen染色してBCG感染細胞をカウントすることがよいのか検討中である。
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