尿路結石は再発率が高く、長期間にわたる予防が必要とされ、継続が容易な予防法が必要である。シュウ酸前駆物質を投与した動物モデルから、結石形成には、シュウ酸による酸化ストレス、尿細管細胞障害の関与があり、抗酸化物質の抗酸化作用、尿細管細胞障害抑制作用により、結石形成が抑制されることがわかっている。しかし、長期間内服継続が必要な結石の予防には、ビタミンEなどの抗酸化物質は、服薬コンプライアンスの問題がある。近年、酸素を直径100nm以下のガス核として、Salting-out現象により安定化させた機能水、酸素ナノバブル水の抗炎症作用が報告された。炎症や組織改変をともなう動脈硬化などの疾病の治療薬となる可能性がある。尿路結石と動脈硬化は、疫学、形成機序、結石と石灰化の構成成分など類似点が多い。そこで、私たちは、尿路結石形成モデルラットを用いて、酸素ナノバブル水の尿路結石形成抑制効果を調べた。 ラット腎の結石形成量は、酸素ナノバブル水を飲水することで有意に減少した。また、酸素ナノバブル水によって、尿中N-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)排泄が低下し、腎断面におけるオステオポンチン、ヒアルロン酸の発現面積は減少した。このことから、酸素ナノバブル水の尿路結石形成抑制機序は、尿細管細胞障害を抑制することで、結石形成に必須の構成成分であり、炎症に伴い分泌されるオステオポンチンや、結晶接着分子であるヒアルロン酸の尿細管腔での発現が抑制され、結果として結晶の沈着が減少すると考えられた。酸素ナノバブル水の飲用は、腎結石に対して、有効な予防法となる可能性が示唆された。酸素ナノバブル水は、塩分を含む水から生成され、生成に化合物を用いないため、安全上の問題を想定しづらい。今後、抗炎症作用をもつユニークな新規物質として、結石の予防を含む医療分野で使用されることが期待される。
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