研究概要 |
平成22年度はMYCマウスの前立腺標本を用いてまずはMYCマウスの自然史について組織学的に検討した。MYCマウスでは生後4週でprostatic intraepithelial neoplasia (PIN)を生じ、生後1年で前立腺癌を生じることを確認した。また、PINと癌の中間的な病変を同定することができ、この病変ではPINと比較して、核小体が縮小しており、細胞質がより明瞭であるという、一見矛盾した、極めて興味深い知見を得ることができた。ヒト前立腺癌では発癌過程を組織学的に検討することは困難であり、MYCマウスにおける発癌過程がヒト前立腺癌の発癌過程を解明する一助となることが期待できる。また、本研究の主目的である癌の化学予防についても、MYCマウスの自然史を踏まえた上で研究を進めることができ、効率よく化学予防の効果を評価することが可能となったと考えられる。また、C-MYC, Nkx3.1, Androgen receptorなどの免疫組織化学を施行し、前立腺癌の発癌過程におけるこれらの蛋白の発現を検討した。前立腺癌が発生する過程でC-MYCとNkx3.1蛋白の発現は逆の関係を示し、複雑に変化していくことが発見された。またPINと癌の中間的な病変ではC-MYCの発現が一時的に低下するという知見も得られた。これらの結果は平成23年度に化学予防の実験を行う上で重要な基礎データとなるものであると考えられる。
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