研究概要 |
本研究は新規樹立した日本人前立腺癌細胞株JDCaPを用い,その分子細胞学的性格の解析とホルモン抵抗性獲得の機序の解明を目的とする。本年度はJDCaPの由来となった患者組織とJDCaPでの分子細胞学的性格を比較した。 i.ARおよびTMPRSS2 fusion遺伝子解析 前立腺パラフィン切片よりマイクロダイセクト法を用いて癌部を切除しDNAを抽出し,genomic DNAのARの遺伝子配列をシークエンスを行い,遺伝子変異の有無を検討した。また,TMPRSS2-ESTの癒合遺伝子の有無をFISH法を用いて検討した。結果,患者検体においてもAR遺伝子変異を認めなかった。この結果はホルモン抵抗性前立腺癌患者の転移巣から樹立したJDCaPがホルモン依存性を示す理由として,患者におけるホルモン抵抗性獲得機序がAR遺伝子変異によるものではないことが示唆された。また,患者検体のFISH解析により,TMPRSS2-ERG fusionを認めた。この結果もJDCaPの解析結果と一致した。 ii.PCA3発現解析 iと同様の方法で癌部からtotal RNAを抽出し,リアルタイムPCR法でPCA3発現強度を解析した。患者検体でも同様にPCA3は強発現していた。 iii.ホルモン抵抗性株の樹立 JDCaPホルモン抵抗性株を樹立するために,マウス皮下にJDCaPを移植し,生着を確認した後に,外科的去勢術を行った。現在処置後3ヶ月経過を観察しているが,まだ抵抗性株は認めていない。 来年度も引き続き研究実施計画に沿って,研究を行う予定である。
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