研究概要 |
本研究は、過活動膀胱により引き起こされる頻尿に対する鍼刺激の効果および作用を検討することを目的に、動物頻尿モデルに対して仙骨部鍼刺激を行った。過活動膀胱に対しては、薬物治療の他にNeuromodulationの一つとして鍼治療が行われているが、治療効果の作用機序は明らかになっていない。 我々はこれまでに仙骨部鍼刺激が膀胱の求心性カプサイシン感受性C線維の抑制により、酢酸誘発の頻尿を改善させる可能性を報告した。頻尿モデルラットに対する仙骨部鍼刺激による頻尿改善は最大膀胱内圧に影響を与えず、過活動膀胱の治療薬として一般的に用いられる抗コリン剤やα1遮断薬による求心性知覚神経C線維の抑制効果とは異なる作用機序である可能性が示唆された。C線維を介した仙骨部鍼刺激の抑制作用は膀胱平滑筋に対する抑制ではなく、知覚求心路の情報伝達に対するnon-adrenergic,non-cholinergic suppressionである可能性が考えられた。また鍼刺激効果に対するモデル依存性の比較として、酢酸誘発頻尿モデルに比べて炎症の関与が強い塩酸誘発による膀胱炎頻尿モデルラットを対象に同様の実験を実施した。その結果、仙骨部鍼刺激は塩酸誘発の頻尿に対しても鍼刺激直後の排尿間隔を延長させた。しかし酢酸誘発頻尿モデルと異なり単回刺激ではその効果は持続せず、施術後の時間経過とともに効果が減退することが明らかになった。
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