薬物により誘発した頻尿モデルを対象に、頻尿に対する鍼治療の効果および過活動膀胱治療薬との併用効果を検討した。昨年度の研究結果より、塩酸誘発の慢性頻尿モデルラットに対する仙骨部鍼刺激は排尿間隔を延長させることから、頻尿症状に対して直後効果が認められるものの、持続的な効果は得られないことが明らかとなった。この所見を元にさらに詳細な検討を実施した結果、炎症の初期段階においては頻尿に関して仙骨部鍼刺激の効果は低いものの、継続して刺激を加えることにより、頻尿を引き起こす膀胱症状の改善を認めた。膀胱粘膜の組織学的所見では、仙骨部に鍼刺激を行うことにより治癒課程に変化が見られた。また、治療薬と鍼治療の併用効果を検討するため、酢酸誘発の頻尿モデルラットに対して過活動膀胱の治療薬として一般的に用いられる抗コリン剤およびα1遮断薬の投与に加え、仙骨部鍼刺激を併用して行ったところ、仙骨部鍼刺激や各種薬剤単独の効果と比較して、頻尿症状のさらなる改善が認められた。これにより既存の治療である薬物と仙骨部鍼刺激の併用により、薬物抵抗性の過活動膀胱に対する効果が期待できる。炎症初期段階では抗炎症作用のある薬物の方が効果的であるが、より重傷度の高い膀胱粘膜および平滑筋への変化が認められる状態の頻尿モデルでは、仙骨部鍼刺激を併用した場合に頻尿の改善効果が高かった。仙骨部への鍼刺激は薬物とは異なる作用機序により頻尿を改善する効果があり、薬物抵抗性の過活動膀胱に対する効果が期待できるとともに、薬物治療効果をさらに補完する可能性を期待できる。
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