本研究は、前立腺癌のマーカーとして注目されるDD3遺伝子が、当研究室で発見した新規遺伝子BMCC1遺伝子の第6イントロンに逆向きにコードされることから、前立腺癌において機能未知non-coding RNAのDD3遺伝子の発現がBMCC1の発現制御に関わる可能性について検討する(項目1)と共に、この制御系を応用した前立腺癌の治療および診断への有用性の検討(項目2)を二本柱としている。 平成22年度は、項目1の「前立腺癌細胞株におけるnon-coding RNAのDD3によるBMCC1の発現制御機構の解明。」について行った。DD3(がん遺伝子の候補)が同じ遺伝子座に逆向きにコードされるBMCC1(がん抑制遺伝子の候補)の発現を負に制御する可能性を検証する為に、前立腺癌細胞株LNCaP細胞株を使用してDD3遺伝子の強制発現系とsiRNAを用いた発現抑制系を用いることによってDD3の発現量を人工的に変動させた。これら細胞について、RT-PCR法にてmRNAの発現を、抗BMCC1抗体を用いたウェスタンブロット法や免疫抗体染色法によってBMCC1タンパク質の発現を検討した。DD3遺伝子を過剰発現したところ、BMCC1の発現がmRNAレベルとタンパク質レベルで有意に低下することを見出した。次に、DD3遺伝子をsiRNAによりノックダウンしたところ、BMCC1の発現がmRNAレベルとタンパク質レベルで有意に増加することを明らかにした。DD3のノックダウンにより、アポトーシス促進因子BMCC1の発現が増加した細胞は増殖が抑制されることも見出した。詳細なメカニズム等については、次年度以降明らかにする予定であるが、前立腺癌で高発現するDD3の発現抑制が、項目2に掲げた前立腺癌の新たな治療法となる可能性を示すことが出来た。 なお、以上の内容は国際学会および国内の学会で報告を行った。
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