これまでの網羅的DNAメチル化解析の結果より同定された膀胱がん特異的にDNAメチル化異常を生じるCpG部位30カ所について、膀胱がん患者尿を対象としたvalidation studyを行った。この結果から30カ所の候補CpG部位のうち、13カ所のCpG部位を用いた検討で、7カ所以上のDNAメチル化をカットオフに設定すると、膀胱がん組織では感度94.3%、特異度97.87%の正確さで膀胱がん診断が可能であった。尿中剥離細胞からのDNA抽出は、Micro DNA Kit (Qiagen)を用いる方法がもっとも安定したDNAが得られ、これまでのPyrosequence法による解析が可能であった。膀胱がん患者尿と健常者尿との比較検討では感度94.4%、特異度100%の正確さで尿から膀胱がん診断が可能であった。現在膀胱がん術後経時的follow-up尿の検証を行っている。Preliminary dataでは術後3年以内に膀胱がんの再発を認めた5例中4例で再発時尿において7カ所以上のDNAメチル化異常を認めた。一方術後3年以内に再発を認めなかった5例中4例では術後3年目の尿でDNAメチル化異常を認めなかった。本年度は術後経時的follow-up尿の解析症例数を増やし、さらなるvalidation studyを行う。またこれらの遺伝子群の発現と、ヒストン修飾、クロマチン構造の変化との関係を明らかにし、膀胱がん発生に関与するエピジェネティックな遺伝子発現制御機構に言及する。
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