研究課題/領域番号 |
22791509
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 史彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (20400343)
|
キーワード | 癌 / エピジェネティクス / miRNA / 子宮体癌 / 漿液性腺癌 |
研究概要 |
これまでに子宮体部漿液性腺癌(漿液性腺癌)において発現が顕著に減少するmicroRNA-34b(miR-34b)を見出し、細胞増殖能、遊走能、浸潤能に関与することを見出した。 本年では、さらなる癌抑制効果を検討するため、miR-34b導入によるアポトーシス活性、足場非依存性増殖能、細胞周期の変化を検討した。また、miR-34bの標的遺伝子の同定するためin sillicoにより候補遺伝子を抽出し、実際にmiRNAによって制御されるか確認するため、Western-blotによりタンパク質レベルでの発現を確認し、標的遺伝子3'-UTRを含むレポーターベクターを用いてmiRNAと標的遺伝子の結合を確認した。 (1)miR-34bの癌抑制効果の検討 漿液性腺癌細胞株にmiR-34bを導入より、caspase-3/7活性の上昇、annexinV群の上昇が確認できアポーシス活性が上昇することがわかった。さらに、Anchorage-independent growth assayにより、顕著に足場非依存的増殖能が抑制されることが確認され、細胞周期解析によって導入によりGO/G1アレストを起こすことが見出された。 (2)miR-34b標的遺伝子の同定 miRNA標的遺伝子検索ソフト(TargetScan、Miranda)により、標的候補としてc-Met遺伝子が予測され、実際に細胞株へのmiR-34b導入試験によりc-Metタンパク質の発現が抑制されることがわかった。さらに、レポーターアッセイによりc-Met-3'UTRにmiR-34bが結合することが確認された。 以上より、miR-34bは漿液性腺癌細胞において様々な癌抑制効果を示すことがわかり、それらの作用はc-Met遺伝子を介すると示唆された。これらの知見は漿液性腺癌において初めての報告であり、新しい治療法の開発につながる重要性の高い成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに本研究では、漿液性腺癌において顕著に発現が減少するmiR-34bを見出した。癌細胞でのmiR-34bの機能として細胞増殖、遊走性、浸潤性および相葉非依存的増殖能の抑制とアポトーシス活性の上昇などの癌抑制的作用を示すことを見出し、c-Met遺伝子がその標的遺伝子として示唆された。以上、これらの成果は漿液性腺癌において初めての報告であり、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、臨床検体および細胞株を用いて漿液性腺癌に関連するmiRNAを見出し、それらの癌細胞での癌抑制効果をin vitroレベルで検討してきた。研究の進展は順調であり、今後はさらに漿液性腺癌に関連するmiRNAを見出しその機能について検討する予定である。また、漿液性腺癌のバイオマーカーを見出すため血清からのmiRNAの網羅的な発現解析を予定している。さらに、現在はマウス腫瘍モデルマウスでのmiRNA投与の治療効果を検討するための予備実験を検討している。以上のように現在は、いくつかの項目を同時に検討することによってさらなる結果の推進を計る。
|