研究課題/領域番号 |
22791509
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 史彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20400343)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / エピジェネティクス / miRNA / 子宮体癌 / 漿液性腺癌 |
研究概要 |
これまでに子宮体部漿液性腺癌(漿液性腺癌)において顕著に発現減少するmicroRNA-34b(miR-34b)を同定し、細胞増殖能、遊走能、浸潤能およびアポトーシス誘導に関与することを見出した。さらにmiR-34bがオンコジーンであるcMetを標的遺伝子にしていることがわかってきた。 本年では、前年度までの結果が1つの細胞株由来の結果であるため、その再現性を検証するため新たな漿液性腺由来癌細胞株を用いて細胞増殖、足場非依存的増殖、遊走能、浸潤能、アポトーシス誘導に関与するか検討を行った。また、miR-34bが抗癌剤耐性に関与するか検討を行った。 ①新たな細胞株での再現性の検討:miR-34bの導入により、前年度までの同等の試験を行い細胞増殖性、遊走性、浸潤能、の抑制、足場非依存的増殖性、およびアポトーシスの誘導が確認でき再現性を得ることができた。 ②miR-34bの薬剤感受性の関与の検討:miR-34bを導入し、一般的に化学療法に用いられるパクリタキセル、シスプラチン、およびドキソルビシン添加での薬剤感受性の変化を検討したが、miR-34b導入による薬剤感受性の変化は3つの薬剤でも変化を確認することはできなかった。 以上のことによりmiR-34bは漿液性腺癌細胞株において細胞増殖、遊走・浸潤性、足場非依存的増殖性、およびアポトーシス誘導など様々な癌抑制的な作用を示すことが確認できた。これらの知見は漿液性腺癌において初めての報告であり、新しい治療法の開発につながる重要性の高い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、漿液性腺癌において顕著に発現が減少するmiR-34bを見出し、癌細胞での機能として細胞増殖、遊走性、浸潤性および足場非依存的増殖能の抑制とアポトーシス活性の上昇などの癌抑制的作用を複数の漿液性腺癌培養細胞株で示すことができた。また、薬剤感受性への影響はなそうである。さらにmiR-34bの標的遺伝子の1つとしてc-Met遺伝子が見出された。以上、これらの成果は漿液性腺癌において初めての報告であり、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、臨床検体および細胞株を用いて漿液性腺癌に関連するmiRNAを見出し、それらの癌細胞での癌抑制効果をin vitroレベルで検討してきた。研究の進展は順調であり、今後はmiRNAの生体内により近いin vivoでの抗腫瘍効果について検討する予定である。また、漿液性腺癌のバイオマーカーを見出すため血清からのmiRNAの網羅的な発現解析を予定している。以上のように現在は、いくつかの項目を同時に検討することによってさらなる結果の推進を計る。
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