子宮内膜上皮由来の2つの細胞株、Ishikawa細胞(子宮内膜癌由来細胞株)、EM-E6/E7/hTERT細胞(子宮内膜上皮由来細胞株)を用いて、子宮内膜細胞におけるエストラジオール(E2)による増殖促進効果に対するクエン酸クロミフェン(CC)の影響を以下の項目について検討した。(1)細胞数カウントとMTSアッセイを用いた、E2およびCCの細胞増殖効果、(2)Estrogen responsive element (ERE)-tk-luciferaseによるプロモーターアッセイ、(3)Green fluorescent proteinを結合させたERα(GFP-ERα)を細胞内に導入し、E2、CC、および抗エストロゲン剤であるICI182780(ICI)投与によるGFP-ERαの局在の変化。【結果】(1)E2は子宮内膜上皮細胞において細胞増殖効果を示し、この増殖効果はCCとICIにより有意に(p<0.01)抑制された。(2)E2はERE-tkの転写を活性化した。E2による転写活性化は、CCあるいはICIをE2に同時投与することにより有意に(p<0.05)阻害された。(3)リガンド(E2、CC、ICI)非存在下ではGFP-ERαは核内に均一に分布したが、リガンド投与後は、いずれのリガンドの投与後にも投与5分後から、核内での不均一な集積を示した。しかし、その変化の程度には差があり、E2、ICI、CCの順で大きかった。また、CC、ICIをE2と同時投与してみると、CC、ICIともにE2によるGFP-ERαの核内での局在の変化を部分的に抑制した。【結論】E2は子宮内膜上皮細胞において細胞増殖効果と、転写を活性化するが、CCはこの効果を抑制すると考えられる。今年度は以上のことが明らかとなった。
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