研究概要 |
前年に引き続き、Ishikawa細胞(子宮内膜癌由来細胞株)、EM-E6/E7/hTERT細胞(子宮内膜上皮由来細胞株)、薬剤としてエストラジオール(E2)、クエン酸クロミフェン(CC)、およびICI182,780(ICI)を用いて、子宮内膜細胞におけるルE2による増殖促進効果に対するCCの影響を、以下の項目について検討した。(1)Green fluorescent proteinを融合したERα(GFP-ERα)の薬剤投与による細胞内における局在の変化およびfluorescence recovery after photobleaching(FRAP)法による動態の観察。 (2)steroid receptor coactivator-1(SRC-1)とERαの相互作用の免疫沈降法および免疫蛍光染色法による検討、(3)SRC-1siRNAを細胞内に導入。SRC-1 knock downによるE2の細胞増殖効果、およびERを介したERE転写活性に与える影響の検討。 【成績】(1)GFP-ERαは核内に均一に分布し、E2、CC、ICI投与後いずれも不均一な集積を示したが、その変化はE2、ICI、CCの順で大きかった。FRAPは、ICI、CC、E2の順に回復が遅延した。ICI、CCによる回復の遅延は、E2投与により改善しなかった。(2)E2によりSRC-1とERαの結合は増加したが、CCおよびIcIの投与により有意に減少した。(3)E2による細胞増殖効果とERB転写活性化はSRC-1siRNA導入により抑制された。【結論】CCはE2の子宮内膜上皮細胞の増殖効果を抑制する。その機序として、ERαとそのcoactivatorであるSRC-1の結合の阻害と転写活性の阻害が重要であると考えられた。また、CCはERαの流動性に影響を与える可能性が示唆された。
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