[対象と方法]異常妊娠(自然流産および胞状奇胎)で、絨毛組織が採取された症例で、妊娠母体から研究参加について文書による同意が得られた、合計10症例について、DNA分析およびp57^<KIP2>免疫染色を行った。 DNA分析:母体末梢血中リンパ球および奇胎絨毛組織よりDNAを抽出し、母体アリルと奇胎アリルにおけるshort tandem repeat (STR)サイズを比較し、DNA構成を判断した。 p57^<KIP2>免疫染色:抗p57^<KIP2>モノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い、絨毛栄養膜細胞および絨毛間質細胞の核の10%以上に染色を認めるものを陽性とした。合胞体細胞の染色性を陰性コントロール、絨毛外栄養膜細胞の染色性を陽性コントロールとして用いた。染色陽性は両親由来、染色陰性は雄核発生と判断した。 [結果]組織診断においては、全胞状奇か部分胞状奇胎かについて迷う症例が少なからず存在した。DNA診断においては9例が雄核発生、1例が3倍体と診断された。雄核発生の9例はいずれも免疫染色診断は雄核発生、3倍体の1例は1免疫染色診断は両親由来であり、免疫染色診断とDNA診断の結果は完全に一致した。10例のうち続発症を来した2例はいずれも雄核発生の症例であった。 [考察]免疫染色診断とDNA診断の結果は完全に一致した。組織診断において診断に迷う症例であっても、免疫組織診断を併用することで、続発症の高リスクである雄核発生の異常妊娠を診断できる可能性が示唆された。
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