子宮内膜の増殖・分化・脱落膜化はエストロゲン・プロゲステロンによって制御されており、エストロゲンの活性は核内受容体であるエストロゲンレセプター(ER)により制御されている。抗老化因子であり植物エストロゲンによりその活性を制御されるSIRT1、SIRT1を制御するDBC1の子宮内膜における発現、作用機序、およびこれらタンパクのホルモン依存性について検討し、産婦人科領域における病態意義を見出した。本研究により、SIRT1が転写因子として細胞接着分子E-cadherinの発現を直接的に制御することを見出した。 1)子宮内膜におけるSIRT1およびDBC1の発現量を定量的PCRで検討したが、増殖期より分泌期の方が高い発現量を示した。 2)SIRT1が、細胞接着分子であるE-cadherinの発現を制御する可能性について検討した。SIRT1の強制発現によりE-cadherinの発現が誘導され、siRNAによる内在性SIRT1のノックダウンによりE-cadherin発現が減少することが判明した。ルシフェラーゼアッセイにより、この発現誘導はE-cadherinプロモーター上に存在するE-box領域に依存することがわかり、SIRT1がE-boxに結合する転写促進因子であるという新たな知見を見出した。 3)SIRT1の活性化をもたらす植物エストロゲンレスベラトロールにより、E-cadherin発現が誘導されることが判明した。 4)着床現象を模倣しているin vitro spheroid attachment assayを用いたところ、SIRT1発現により子宮内膜細胞の胚受容能が亢進する可能性が示された。また、レスベラトロールにより同様に胚受容能が亢進する可能性が示された一方、SIRT1のインヒビターでは胚受容能が抑制された。
|